p21
政治家ってどうしてあんなに恥知らずなんだろう。
p34
大学でときおりみかける彼女の姿を、ぼくはまぶしげに遠くから眺めていた。
p35
これはもう、はっきりと青春、それ以外のなにものでもない。
p35
そう口走ったとたん、自分で赤面しているのがわかった。
p38
「お願いなんかしてたってだめ、自ら闘って奪い取らなくてはならない」という方向に運動は進んでいったのである。
p43
本屋に置いてあっても誰も買わないだろう自分の著書をテキストにして、俺たちに無理矢理買わせやがる。
p45
集団で何かをするという行動様式にどうも馴染めない、わずらわしいなという感じがあったのだ。/人見知りする性格だったわけではない。ぼくは、ものごとが自分の思いどおりにいかないくては嫌だという気持ちが人一倍強い。集団では、エゴを抑えてみんなと協調してやっていかなければならない。だから、そういうところには近づかない。ようするに、わがままだったわけだ。
p49
お前なら、一年みっちり泳ぎこめば、オリンピック選手も夢じゃないぞ[。]
p50
「ガキのころから水泳だけやらせるというのは、ほんとうはあまり感心しないんだ。ロープで仕切られたコースの中を、ただお行儀よく行ったり来たりするだけだからなあ。ほとんどものを考えない人間ができあがってしまう」
p53
その仕草がまた、じつに知的でまぶしい。
p65
「バタフライがちゃんと泳げる人間は少ないから、それをマスターすると、何か自分がとくべつなことをやっているような錯覚を持つんだろうな。けっこう、その気になって頑張ることが多いんだよ。まあ、あれだ。ブタもおだてりゃ木に昇るってやつだよ」
p94
慣れないと不安、馴れすぎると不安。まったく青春というのは自意識ばかり過剰で、やっかいなものだ。
p102
だがぼくの場合、学問を仕事とするには、決定的に欠けているものがある。それは勤勉さという資質だ。
p119
ぼくは教師という人種との相性があまりよろしくない、そう考えるしかなかった。
p122
なにごとも、なかなか教科書どおりにはいかないということだろう。
p127
国が認定する資格(たとえば医師免許証)なんて、本質的にはたいした問題じゃない。どこかで耳にしたんだろう、「何者であるかより、何をするかのほうが大切だ」。ぼくは、そんなふうに思っていた。だが、「何者でもなく、何もできない」ときはどうすればいいんだろう? そんなとき、自分がもっとも嫌っているはずの国の認定や大学への帰属が、妙な安心感を与えてくれるらしいことに気づき、愕然とした。
p142
麦藁帽子の美少女との出会いを夢見ていた。
p153
いっそ、いきなり命にかかわる病気なら、「すぐに入院してください」「はい、わかりました」と双方納得しやすい。だが、重病とはいえないが不快な症状のときは、どう判断すればいいのだろう。
p175
手術に慣れきって、まったく緊張感がないというのもどうかと思うが、あまり余裕がないのも、見ていて何だか心配なものだ。緊張と弛緩(しかん)、このあたりのバランスをとるのがなかなかむずかしい。
p188
大学病院だから安心だという根拠はなにもない。むしろ、ぼくのような学生とか、腕の未熟な研修医などがごろごろしていて、かえって心配なくらいだ。
p188
永井君はいい人だから(甘いから)、わたしが頼めば何でもやってくれる__意識的かどうかはべつにして、そんな感じなのだ。
p191
教授回診の光景を大名行列と言った人がいるが、言い得て妙、まさにそんな感じだ。
p191
教授が医局員を誉めるということは、まずないと考えたほうがいい。「君の診断技術はじつにすばらしい」などという言葉は、皮肉以外ではけっして発しない。
p193
最初にその光景をみたとき、この婦長は以前キャバレーにでも勤めていたのかしらと思ったくらいみごとな技だった。
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