[語学] register を意識せよ

Hitoshi Arakawa | 2025/03/02 Sun 04:32

語学学習に関する YouTube 動画をよく観る。その中でも外国人がいかに日本語を学習したのかを知るのが楽しい。

ある YouTube 動画でやたらと日本語がうまい外国人がいた。単に「日本語が上手ですね」といったお世辞ではない。本当に日本人が喋っているように話すのだ。

その人は日本語を YouTube やアニメ、漫画で学んだという。伝統的な教科書や暗記カードを使った学習法はしていないらしい。

参考になったのは、短めのYouTube 動画でシャドウイングする練習だ。1文ずつ一時停止して、日本語を発音する。意味が分からなくてもともかくマネする。

ちゃんと文法を勉強し、辞書で調べたりしないとダメだと思ってしまうのは日本の英語教育を受けてきた日本人的発想であり、その人はその方法で立派に、というか十分すぎるほど流暢な日本語を話しているのだ。

言葉の意味はほんらい文脈に埋め込まれている。逆に言えば文脈によって、いかようにも意味が変わってしまう。意味とは文脈に埋め込まれているのだ。これは僕が大学で言語学を学んだときにも教わっていないはずだか、のちに書籍で知った。

YouTube や映画やドラマといった動画は具体的状況が分かりやすい。コンテクストと一緒に言語を学ぶには最適だ。

しかし問題点もある。

日本に興味を持つ外国人はアニメや漫画が好きな人が多いし、それらで日本語を学ぶのが自分の興味と結びつくので勉強がはかどるんだろう。でも言語が register(言語域や言語形態と訳される)を意識しないと危険だ。つまりアニメ語、漫画語を普通の会話で使ってしまう。特に日本語は友だち同士、家族、職場などで register がかなり異なる。

僕がイギリスに留学していたとき、台湾人の女の子と映画に行ったことがあった。その子が別れ際に「じゃあな!」と言っていた。きっとアニメで学んだ言葉だろう。あの状況でそんなアニメ語を使うのは変だよ。

大学事務職員をしていたとき、アメリカ人の先生(おじさん)と話をした。その先生が会話の途中で「そうなの」と言った。どうやら日本人のガールフレンドがいるらしく、その女性の言葉をマネたんだろう。急に女性語になってビックリした。

現在僕はちょうど外国人に日本語を教えている。その人はまだ初級者だけど、とりあえず敬語で話すことを勧めている。日本語初心者には教科書的な丁寧語で話すのが安全だ。

参考:
Fluent In Japanese FAST. How I Did it. 100% Self Taught. - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=St_Fk0_5jgA

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